年末の、うれしい悩やみ




諸般の事情で、まだ(計画中の)忘年山行が実施できていなので

めずらしく、お酒の話を。


私は、基本的に飲んべえではありませんが

一時期、日本酒(といっても地酒)に入れ込んでいた時期がありまして


日本全国の、これはと評判の地酒は、ほぼ6割方(?)は

試飲したことがあるんですが……


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そのきっかけとなったのは、

学生時代のアルバイトで、関東甲信越の何かのメーカーの市場調査で

誰もが行きたがらなかった、新潟県に一人で行ったんです。

その時期が、春3月。

首都圏なんかでは、もう梅は咲いたか桜はまだかいな…みたいな頃、

新潟県の寒村地帯では、まだ道路脇には残雪がうず高く積もっていて

効率よく回ろうとして、50ccのバイクを借りたんですが、

あちこちで、スリップして転倒しそうになりながら……



越前高田の郊外にあった、調査リストにある大きなお屋敷にたどり着いたら

そこは、当時は首都圏では全く知られていない造り酒屋だったんです。


なんの紹介状もなく、ただ市場調査のためにやってきた学生に対して、

出迎えたのは、いかにも威厳のある白髪白髭の老人でした。

趣旨を聞いた老人は、

「ちょっと待っとれ」と言って調査用紙をもって奥に引き込み



……しばらくすると、お盆の上に、3つの湯飲み茶碗を乗せて現れました。

「用紙は、奥で書かせておるが、

せっかく遠いところから来たんだから、利き酒をしていきなさい」と、

私、「あの、バイクなんですけど…」

老人「そんなことは、どうでもいい」

というわけで、

3つの(利き酒用の)茶碗から、それぞれ、ほんの少し飲んでみました。


と、老人が

「ヌシは、どの酒が、いちばん良い酒だとおもうかの?」

と問い、

私は、ちょっとためらってから、「コレですね」と言いました。


すると、いままで、天狗のように厳しかった老人の顔が

いきなり、人の良さそうな造り酒屋の主(あるじ)の顔になり、

「そうか、そうか……じゃ、せっかく遠いところから来たんだから、

残っている酒を飲み干したら、酒蔵を案内するからついてきなさい」と。



もちろん、酒蔵の中なんかに入ったのは初めてで

当時はまだ、木でできた大きな酒樽に仕込んでいた時代で、

ハシゴをあがって、上から中を覗き込むと、白い泡がブクブクとしていて

私が、「どうして、蓋をしないんですか?」と問うと、

「それはの、その樽の上をネズミが走り回っての、酒っ気に酔って

中に落ち込むようにじゃ。たくさん落ち込んだほうが、味が良くなるでのな、

あっハハハハッ…」

なんて、

老人はすっかり上機嫌で。



そして、座敷にもどってから、こんなシリアスな話も初めて聞きました。

「東京あたりで売っている酒で、人気があるのは?」

「やはり、灘の酒ですかね」

「じゃ、その灘の酒は、どこで造っている?」

「やっぱり、六甲山の麓ですかね」

「もちろん、そこでも造っているが……毎年な、灘の大手酒造メーカーの

担当者が、このあたりの小さな造り酒屋を廻ってな、

いわゆる”樽買い”をして行くんじゃよ。そ~でもしなきゃ、

アレだけ全国で売れている酒の量は、調達できないんじゃ」と。


でも、「わしの眼が黒いうちは、絶対に、樽買いなんかに

ウチの酒は渡せん!」と。




……それから20年ぐらいたって、日本酒ブームが起きた頃、

いわゆる”越の三梅”という新潟県の地酒が、

地元で一升ビン1300円ぐらいで売られていた普通酒でも、

首都圏では、なんと、その10倍の値段でも手に入れたい!という

日本酒ファン(?)で入手困難になったり。


その中でも、とくにプレミアムがついていたのが…

あの、白髪白髭の主が造っていた「雪中梅」だったんです。



まあ、そんなわけで、不思議な出会いというか

貴重な経験から、全国各地の信念と意地のある(?)地酒を

いろいろ飲んでみたくなったワケなんです。



………でも、時は過ぎて……昨年4月に発覚した例の病気で、

日本酒は禁断の酒となってしまいました。



でも、私、日本人なので

やっぱり、お正月には”お屠蘇”も飲みたい!し、お雑煮も食べたい!



さあ~て、たった1本の地酒を選ぶとしたら……

東の「田酒」か、西の「李白」か

はたまた、南紀の「黒牛」か、土佐の「酔鯨」か、悩むな~~






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by shimasaan | 2017-12-20 07:53 | その他あれこれ | Comments(4)
Commented by BBpinevalley at 2017-12-20 08:31
楽しいお話でした。
本当にネズミが入っていなければいいのですが…(笑)

日本酒には無知ですが、お味はとても好きです。
たくさん飲めないのが残念。
酒豪になりたい。
Commented by shimasaan at 2017-12-20 18:38
ネズミの話は、今でも、
半分ホントーのことじゃないかって、思っていますが……

よい日本酒を、ホロ酔いぐらいまで飲めたら、
それが1番。
けっして、酒豪になんかならないでくださいね。
Commented by dojyou38 at 2017-12-21 08:59
日本酒ですか。
随分奥深く嗜まれたのでしょう。

私は焼酎(三岳)派ですが家内は日本酒(菊水ふなぐち一番しぼり)ですが、
正月のお屠蘇とお節の酒はやはり清酒でないと納まりませんね。

お好みの銘柄に鯨酔がありましたが、
四国生れの私は九州に転勤して焼酎派になるまでは良く飲みました。
さらっとした辛口が好きでした。
Commented by shimasaan at 2017-12-21 19:30
dojyouさん、こんばんわ

「酔鯨」の印象を、私流に表現するなら…
石原裕次郎あたりが、「コレぞ男の酒ぞ!」と一升瓶を差しだすような酒。昔の男は、こーゆう酒を飲んでいたんですね~
って感じです。
全国津々浦々に、地酒の銘酒があって、「月桂冠だ剣菱だ」なんて、私にはまったくお呼びでないお酒です。
奥様、「菊水ふなぐち一番しぼり」なんて、冷やでおいしいお酒を飲んでいますねー、
くれぐれも、飲み過ぎにご注意ください。

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地図を読みながら、不安な両ヒザをだましだまし、血糖値を管理しながら、さらに緑内障の進行をくい止めながら、それでも楽しく山を歩きたい。


by shimasaan
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